債務の相続
亡くなった方(被相続人)に金銭債務があった場合、相続人はどのように負担するのでしょうか。
「被相続人Aには3000万円の資産と1000万円の債務があります。
相続人はAの子であるBとCです。」
民法に次のような規定があります。
第427条 数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
判例は、この規定をもとに、相続債務について、相続分に応じて相続人が分割承継するとしています。
したがって、法定相続分からすれば、BとCは、それぞれ1500万円の資産を相続し、500万円の債務を承継するということになります。
では、次のような場合ではどうでしょう。
「Aは遺言書を残しており、Bに事業を継がせるため、2000万円の資産とともに、事業の債務1000万円も全てBに相続させることとし、Cには1000万円の資産を相続させることとしていました。」
この場合、Aの債権者はBに対してしか債務の履行を請求することはできないのでしょうか。
この点について、判例は、相続人間の債務の指定の効力(誰が承継するか)を認めつつ、債権者の関与がなく指定されたものであるから、債権者にはその効力は及ばないとしています。
すなわち、債権者が法定相続分によって、2分の1ずつの履行を求めれば、相続人はこれに応じなければならなくなります。
もちろん、債権者が遺言による相続分の指定を承認すれば、指定相続分に応じて履行を求めることができるということになります。
遺言ではなく、遺産分割協議により相続人間で債務の負担を決めた場合についても同様に考えられます。